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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)564号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人堂野達也の上告趣意について。

原判決が第二事実として認定した被告人の大河内宗一方における窃盗の日時が被告人の原審公判廷における自白によれば、昭和二三年七月一四日午前一時半頃であり、被害者大河内宗一作成の盗難被害届書によれば、同月一八日午前三時頃とあって、その間四日の違いがあることは所論の通りである。原告は、被告人の自白を信用できるものとしてこれによって前記窃盗の日時を認定したものと思われる。いずれの證據を信用するかは原審の判斷に委ねられているのであり、數多の證據を綜合認定の資料とする場合にその一部において抵觸する點があるとしても、その一を捨て他を採ることはもとより妨げないのであるから、これを目して違法であると言うことはできない。それに假りに届書記載の日時が正しいとしても四日の違いに過ぎず、これがために本件では法律上の判斷に影響を及ぼすものとは認められない。辯護人は、届書の日時は自白の日時と違うのであるから、届書は自白の補強證據とならないと言うのであるが、届書に書かれてある被害の場所、被害者、被害物件等は自白と一致している。つまり、届書に書かれている本件窃盗の具體的な客観事実は自白と一致しているのであるから、届書は補強證據として役立つのである。されば、原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって、舊刑訴法第四四六條に從い主文の通り判決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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